池坊由紀の花のこころ

池坊由紀

2007.05.24

緑が目に眩しいころになりました。 五月はお天気にも恵まれ爽やかな月ですが、池坊では引き続き池坊中央研修学院の入学式があり(何と月末まであるのです)、また東京花展に池坊全国大会と行事続きの忙しい日々の連続です。その合間を縫って本部のすぐ近くにある、京都国際マンガミュージアムに行ってきました。

昨年秋にオープンして以来、すでに10万人もの入場者を超えた人気スポットなのですが、仕事の行き帰りにずっと横目で眺めては通りすぎていました。明治時代に建てられた小学校の校舎跡を活用していますが、昔の建物はなんと風情と品格にあふれていることでしょうか。

今のモダンな建築も、もちろん素敵なのですが、時代を感じさせる重厚さと静かな落ち着きのある様子は、とても居心地のよい空間を生み出していました。そこにマンガ、マンガ、マンガの壁がそびえています。外の芝では寝ころんでマンガを読みふける人あり、昼寝している人ありで、くつろいだ、のどかな雰囲気がただよっていました。

そこでお話しを聞いたのですが、驚いたのは、「マンガは強調と省略である」というお言葉!これっていけばなの授業でもよく使われる表現ではありませんか。自分の抱いたモチーフと、そして目の前にある草木や花たち、例えその数が多くなくとも、そこには無限の組み合わせと表現が用意されています。その余りある可能性の中から一つのことに焦点を絞り、そしてそれを形として表す時に、どこを強調して、どこを捨てていくか、その見極め、判断がとても重要になってきます。

自分の心があれやこれやと迷っていたり、欲張りすぎていたりして、漫然とした気持ちでは、その心模様が作品にもでてきてしまいます。花をいけるということは、自分自身の心と真っ向から向かい合い確認する作業でもあるのです。

だからこそ、花をいけるということは、楽しい反面、時として苦しかったり、せつなかったりするのかもしれません。そして花をいける度に、私はいつも人は結局最後は自分の心からは逃れられない、自分の心には嘘をつけないのだということを、思い知らされるような気がします。

強調と省略、これは人生のテーマでもあるかもしれません。沢山のものや、人と出会い、また体験しながら何を大切にいかしていくのか、あるいはその逆で、勇気をもって何をうち捨てておくのか、時間もエネルギーも有限のなかで、そのことに気づき、また実際に実行できる人が、もしかしたら成功していくのかもしれません。

自分とは接点がないと思っていたところから、いけばなに通じるヒントをもらい、いろいろなことを考えた一時でした。

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