イベントレポート
2025.05.20

大阪・関西万博「いけばなの根源 池坊展-TRANSITION-」を開催しました

華道家元池坊は、大阪・関西万博の開幕に合わせ、4月13日から20日までの期間、いけばなの根源 池坊展『―TRANSITION―』を開催し、華道の魅力を世界に発信しました。
池坊は、1970年の大阪万博から2005年の愛・地球博まで、数々の博覧会にいけばなで協力しています。今回の大阪・関西万博では、池坊専好次期家元が副会長を務めています。関連展示・イベントとして、関西パビリオンでのいけばな展示、IKENOBOYSによるパフォーマンス、池坊専宗青年部代表によるいけばな展示も実施しました。

いけばなの根源 池坊展は、海を望むガラス張りの会場〈ギャラリーEAST〉で開催。昼と夜とで異なる趣を見せる空間に、「TRANSITION(変遷)」をテーマに室町時代から続くいけばなの変遷を作品で表現しました。万博のテーマ『いのち輝く未来社会のデザイン』にちなみ、「いのちと向き合う文化」であるいけばなを通じ、未来への思いを伝えたいとの願いも込めました。

展覧会では、コニカミノルタジャパン株式会社、株式会社MagnaRecta、株式会社iDatengo、株式会社enigmaの協賛・協力のもと、最新技術とのコラボレーションが実現。伝統文化と科学が融合した空間を創出しました。

次期家元や青年部代表をはじめ、関西在住の池坊中央研修学院の教授陣や研究員が、アップサイクル可能な「光る花台」などを用い、前期・後期あわせて15瓶を出瓶。

次期家元は、『桐の一生』と題してクレマチス、都忘れ、バンダ、ジゴベタルムを用いた大作自由花を出瓶し、「蕾、花、実、殻が一本の中に存在する桐の木を通して、命の巡りに思いを寄せる契機となれば」とコメントしました。
青年部代表は、ブルーベリー、スノーフレーク、ヒノキなどを用いた立て花(前期)を出瓶。「室町時代末期の応仁の乱の中でも池坊はいけばなを生け続けた」「花を生ける心には550年以上の時代の隔たりや人の暮らし方の違い、国籍や言語といったさまざまな境はありません」と語りました。

次期家元の作品

青年部代表の作品

立て花(後期)は東勝行特命教授、古典立花は西田永教授(前期)と土屋郁剛准教授(後期)、生花正風体は今川清研究員(前期)と髙林佑丞研究員(後期)、自由花は野田学教授、生花新風体は鈴木麻里子研究員(前期)と藤井真特別嘱託講師(後期)、立花新風体は三浦大生講師、大砂物は島津範好講師が出瓶しました。

(左)東特命教授(中)西田教授(右)土屋准教授

(左)今川研究員(中)髙林研究員(右)野田教授

(左)鈴木研究員(右)藤井特別嘱託講師

(左)三浦講師(右)島津講師

また、テクノロジーといけばなが融合したインスタレーションも展開。土屋准教授と門弟有志が担当した『Cycle of Life』では、3Dスキャンデータを用いたデジタルランドスケープが流れる8Kモニター3台の上に、それぞれ『岩「大地」』、『根「進化」』、『木「更新」』をテーマにした自由花をいけ、デジタルと自然が響き合う空間を創出しました。観覧者は、各作品の前に掲示されたQRコードから、作者のプロフィール、花形の説明等を読むことができました。

初日13時から会場で関係者レセプションが開かれ、次期家元、青年部代表、後援各社のあいさつ、作品解説などがありました。また花展期間中、池坊専永宗匠、池坊美佳審議役、池坊雅史事務総長が会場を訪れ作品をご覧になりました。

会場運営や外国語対応、インスタレーションのサポートには、池坊華道会会員から公募された全国各地の延べ43名のボランティアスタッフが従事。各自がその能力を活かして役割を果たしました。

来場者からは「水際やこみわらなどが、勉強になった」「時代ごとの花が並び、わかりやすい」などの声が寄せられました。海外からの来場者も多く、古典の花形や異質素材に関する質問も相次ぎました。会期中は多数のメディアからの取材もありました。

なお、2024年の旧七夕会池坊全国華道展以降、今年は全国4カ所で開催される本部展において、万博をイメージしたテーマやポスターデザインを採用し、万博との連動を図った展示が行われています。

【関連展示・イベント】

■関西パビリオン京都ゾーンでいけばな展示
関西広域連合が出展する関西パビリオン京都ゾーン「ICHI-ZA KYOTO 一座きょうと」では、オープニング企画として4月13日から19日まで池坊によるいけばな展示を実施。京都、滋賀、奈良、兵庫、大阪の各支部に所属する若手会員延べ21名が中作・小品の自由花を出瓶しました。会場では茶道四流派による呈茶席も設けられ、抹茶と菓子が振る舞われました。大スクリーンでは池坊が協力した華道紹介映像も放映され、来場者からは「京都らしさを感じた」と好評でした。

■IKENOBOYS×春野寿美礼 スペシャルライブ
4月19日、IKENOBOYSの田中伸明、上西将吾、星野貴志、岡本和也、手嶋悠人各氏が、ギャラリーEASTに隣接するポップアップステージ南で2回にわたりいけばなパフォーマンスを披露。元宝塚歌劇団花組トップスターの春野寿美礼さんをスペシャルゲストに迎えました。

初めに音楽に合わせて竹やヤマナシなどを用いた作品を制作した。続いて春野さんが登場し「前山にて」を披露。トークの後には春野さんの歌う「パレードに雨を降らせないで」に合わせて、桜や枝垂れ柳で京都・六角堂を表現した大作を完成させました。

■青年部代表がパビリオン「null²」でいけばな展示
青年部代表は、落合陽一氏がプロデュースする大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「null²(ヌルヌル)」の茶室において、4月13日から10月13日までいけばな作品を展示。無機質な空間に有機的な花を取り入れた演出が注目されていました。

◆協賛・協力

コニカミノルタジャパン株式会社
この度、池坊様とのご縁をいただきましたこと、大変ありがたく存じます。
私たちはコニカミノルタが長年培ってきたビジュアルコミュニケーションの科学技術を礎に、空間における体験価値を創造するマーケティングチーム「BAUMX(バウムクロス)」を立ち上げました。
日本の伝統文化である「いけばな」と科学が融合した新しい空間体験に、微力ながら協力させていただくとともに、今後のますますの発展をお祈り申し上げます。
▶BAUMX(バウムクロス)

株式会社MagnaRecta
「130(ワンサーティ)」は、一本のフレームを連続的に立体構築する革新的な造形技術をコアに、作品やプロダクトが持つ“意味”や“価値”を長く保ち続けることを目指しています。素材そのものを解体・再素材化しながらも、作品が内包する本質や美意識を途切れさせないサステナブルなアプローチは、伝統芸術であるいけばなが受け継いできた精神や姿勢に、私たちなりのかたちで呼応できると考えました。

池坊様が花を通じて表現する儚さや生命力は、単なる装飾ではなく、人の心に深い印象と価値を残します。一方、130のプロダクトは物理的な循環性を確保しつつ、作品そのものの意味を損なわずにアップサイクルする仕組みを持っています。今回のコラボレーションでは、いけばなのもつ“生”と“循環”という本質的なテーマを、私たちの技術によって花台というかたちでサポートし、その儚さと永続性を同時に提示できればと考えました。

いけばなが魅せる一瞬の美しさと、130が追求する循環を前提とした持続可能なものづくり。その両者が響き合うことで、大阪万博の場で“伝統の未来”を感じていただける機会となれば幸いです。
▶130(ワンサーティ)

株式会社enigma
弊社はこれまで、現代アート作家の支援を通じて新たな芸術文化の発展に貢献してまいりました。
この度は日本の伝統文化とデジタルアートという異なる分野で、コラボレーションできる事を大変嬉しく思います。
伝統文化の新たな可能性を広げるとともに、より多くの方々に芸術の素晴らしさを体験していただきたいと考えております。

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